2014年05月16日

辻克己編著『實際圖案カット大集』浩文社刊昭和10年初版 2300円

これもまたグラフィックデザイナー辻克己氏による、昭和初期のカット図案集です。
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外函つきです。
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本体のヒラには題字も何も書かれておらず、見た目・手触りともに鰐皮のような風合いの凝った意匠になっています。

昭和10年1月8日初版です。
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大きさ:本体およそ26×19.5×2cm強(扉1ページ+巻頭多色刷り図版2ページ+本文160ページ+奥付1ページ)、外函およそ27×20.5弱×2.5cm
重さ:本体およそ700g弱、外函およそ120g弱
手入れ:外装のみエタノール拭き上げ 一部破損部分製本用糊にて補修

扉その他に旧蔵者印や署名などは見当たりません。
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巻頭にカラーページが2枚ついています。
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先に掲載した『現代圖案カット大集成』のような光沢ある塗工紙にではなく、単色刷り本文の紙よりは肌理が細かいものの表面加工は施されていない用紙に刷られています。

さて、その本文は、というと…
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ありゃ、どこかで見たような絵ですね。
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実はこの本、『現代圖案カット大集成』と中身は殆ど変わらないのです。
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巻頭に目次はないものの、
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やはり「人物」「動物」「機械科學」「建築物」「造型静物」「風景」「模樣・雜」の7篇に分類されています。…というより、
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2箇所ばかり消し忘れている書名を見れば明らかですが、『現代〜』の版をほぼそのまま流用した本のようなのです。

本文の刷り色は茶→墨→緑→墨→茶と換えられています。『現代〜』よりも1色少ないことになります。
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また、各篇毎のカラーページはありません。

見返しは意外と和風の柄です。
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『現代〜』のシンプルな太い横縞とだいぶ印象が違いますね。

天だけでなく、三方が緑色に染めてあります。
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お蔭で小口の焼けもあんまり目立ちません。

殊に本文紙は全体的に焼けが目立ちます。ノドの割れ具合はそれほど大きくなく、綴はしっかりしています。
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さほどひどくはありませんが、絵の具や水染み痕などもところどころに見られます。

それから、どうしてこうなったのか判りませんが見開きで2箇所、天側が帯状にひどく焼けているところがあります。
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まるで開きっぱなしのまま、その上にものを載せて何年も放置してあったかのようです。

目立つ破れ箇所が3つほど、いずれも製本用糊で補修してあります。
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後見返しのノド側には、製造工程でついた大きな皺があります。
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色箔押しのある背は劣化していて、崩れるところまで行ってはいませんが全体的に亀裂が走っています。
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綴はそれほど弱くなってはいません。外函も強度は保っていますが、前の写真でお判りのように天の小口側が大きく破れています。
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函は全体的に埃焼けしており、また背の一部が波打ってしまっています。
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角が全体的に擦り切れています。

ところで昭和10年初めといえば、『現代〜』の方は奥付によると前年に出された3版が発売中で、この年の3月に4版が出ていることが判ります。

何故この時期に版を流用した別題の本を出したのでしょうか。2冊の奥付を並べて眺めてみると、
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『現代〜』(下)の定価が4円30銭に対して『實際〜』(上)の方は2円丁度、つまり前者の廉価版として後者は作られたと考えられるのです。

『實際〜』の巻頭カラーページの用紙は『現代〜』の単色刷りページの用紙と同じと思われ、また前者の単色刷りページにはより肌理の粗いごそっとした紙が使われています。『實際〜』の紙焼けがひどいのはその紙質の所為ではないかと想像しています。

ねこの隠れ処蔵書の『現代〜』外函(右)には編著者名や版元名がヒラにも入っていますが、
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『實際〜』(左)の方は背にしか入っていません。
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ページ数もカラーページを含めれば半分に欠けるところまで省き、その他あれこれコストダウンに努めて、『現代〜』はちょっと手の出ない一般庶民の要求に何とか応えようとしたのだろうと思います。

なおねこの隠れ処では、同書のヒラの柄が異なる本(右)も架蔵しているのですが、
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ご覧の通りそれの巻末(右)には印刷発行日付は変わらないものの「圖案カット資料大集奥附」と書かれており、
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そその箇所に「實際圖案力カット大集奥附」(ママ)と書かれた紙片が貼ってある商品(左)が実は重版である可能性は捨て切れません。

ただ、いずれにしても『現代〜』と較べると発行部数はかなり少なかった(=つまりそれほど売れなかった)ものと思われ、結果として今日では却って稀少性が上がってしまっている、という聊か皮肉な状況になっているようです。
posted by 黯ねこ at 21:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍雑誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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