昨日掲載したのと同じ、デザイナー辻克己氏による昭和初期頃の図案カットを集めた本です。

表紙は2色の色箔押しを使った豪華な装釘です。

残念ながら、こちらも外函は失われています。
初版発行から3年弱経った昭和11年4月15日7版です。

私見ではこの版が、最も出回っている数が多いように思います。
大きさ:およそ26×19.5強×3.5cm
重さ:およそ1070g
手入れ:外装のみエタノール拭き上げ 一部カラーページのノド部分製本用糊にて補修
再版(左)ではミシン目に沿って綺麗に切り取られきちんと真っ直ぐに貼られていた検印紙が、この版(右)では端はちぎれているはひん曲がって貼り付けられているは…

よっぽど急かされていたのでしょうか。
裏見返しには札幌の狸小路にあったらしい「北星堂書店」のラベルが貼られています。これもなかなか素敵なデザインですね。

この古本屋さんはどうやら現在はなさそうです。札幌古書籍商組合さまで昨年刊行されている『札幌古書組合八十年史』など繙けば、何らかの情報は拾えるかも知れませんが…。
この本には、扉・本文などにも旧蔵者の印は捺されていません。

内容は勿論、昨日ご紹介した本と同じです。

こんな略画の描き方が載っていたり。

ユーモラスなイラストも色々。

「カット」とは標榜しつつも、結構大きな絵もあります。


今から80年ばかり前の「現代」が垣間見られます。
そうそう、昨日の再版本では失われていたカラーページ1枚も、この本にはちゃんとありますよ☆

引っぺがして飾りたくなる心情になるのも解らなくはない、なかなか綺麗なイラストです。
全体に紙焼けや染みなどがありますが、殊に人物篇・動物篇・機械科學篇の下端の方に汚れが目立ちます。




恐らくデザイン制作現場のようなところで、画材で汚れたままの手で盛んに捲っておられたのでしょう。
それでもカヴァーはかけておられたと見えて、見返しの糊痕が各2箇所ある側は焼けが少なくなっています。


ただ、よく観ると地側や小口側がやっぱり焼けているのが、ちょっと不思議ではありますが…。
カヴァーがかかっていたのではないか、と考えるのは、表紙がかなり綺麗な状態であるのもおおきな理由です。

件の再版の方のように、背がバリバリになったり亀裂が走ったりもしていません。

ご覧の通り、ヒラもつやつやしています。
天はやはり茶色に染め付けられています。

何か固いものがぶつかったとみえて、真ん中辺りがちょこっと凹んでいます。